引きこもり小説?あるいは僕らの世代の自伝か?

NHKにようこそ!
ハードカバーで発売された当初、かなり興味津々だったのですが、読まずにいました。文庫化されているのを発見して購入、3時間ほどで読み通しましたよ。

冒頭は完璧に私小説です。正直なところどうしようもなくて、私小説嫌いの私にはたまらなくつらい。2,30ページ読むのがしんどいのです。

主人公が郷里の後輩やヒロインに出会うあたりから物語は急展開していくのですが、文体や描写の軽さのために、「これはどこまでもライトノベルだな」という印象をぬぐえません。
文体、描写を他の作家にたとえるなら、岬兄悟のそれに近いですかね?あのスラップスティックコメディSFの下らなさに近い。下ネタ加減も似ています。

合法ドラッグ(今は脱法ドラッグというのかな?)の描写もありますが、このあたりは野坂昭如の若かりし頃の小説を見るようでした。

文学的テーマの漂わせ方は、中島らも的。クライマックスの盛り上げ方、オチの付け方あたりもそうですかね。そう考えると、私小説を抜けたあたりからのハイテンションっぷりは、らも的というと適切かもしれません。

「あれに似ている」「これに似ている」と、自分でもイヤになる種類の散々な論評を加えてしまいましたが、この本は面白いですよ。
主人公の孤独感とか、友人やヒロインの孤独に対する(非常に薄っぺらな情報に基づく、なにやら深刻な)共感とか、「合法ドラッグ」という屁たれな現実逃避とか、「これは僕らの世代の男の自画像なのかもしれないな」と思いました。