”HogeHoge2.0”を説明し、納得してもらうには

自分より明らかに優秀で、業界での地位・認知度もはるかに上の人間に、ごく一部の分野についてであれ、何かアドバイスめいたことを伝えようというのは、大変気乗りのしない仕事ではあります。なけなしの「知的良心」「誠意」というやつがうずくわけです。

ですが、知人(有り体に言うと、昔の会社の後輩)が、それなりの分量の雑誌記事(※「HogeHoge2.0」なんてタイトルでね)を書いているものの、「最初の節から、いったい何を言いたいのかさっぱり分からない」という惨状を呈しているのを見ると、はなはだ僭越ながら、文章を書くとき何に気を付けたらいいか」、伝えてみたくなるのもやむを得ないのじゃないでしょうか。


前置きはこれくらいにして、本題です。

「HogeHoge2.0」という言い回しは、IT業界を中心に、マーケティングあたりの人々を巻き込みながら、それなりに流行しているわけですけれども、たいがいの場合、どうも得体の知れない、中身の無い概念のように見えます。

これは、おそらく、「HogeHoge2.0」を提唱する人たちの、語り方がダメなんだと思えてなりません。

まず、最低限必要なのは、その「HogeHoge2.0」の定義を述べること。一般化した表現が必要になります。続けて、順序を問わず、次に挙げるような内容を述べなければ、分かってもらう・利用してもらうことは難しいと思います。

一つは、具体例です。HogeHoge2.0の一般的な定義によく合致する、具体例。これが無いと、なかなか理解してもらえないでしょう。もう一つは、「2.0」が「1.0」と違う点の比較。さらに、「2.0」が「1.0」に比べて優れている点。


ためしに、この日記を書いている私、izagonの1.0と2.0を例にしてみましょう。


izagon2.0は、結婚・妻の出産を機に、新たな信条を身に着けた、izagonのことです。新たな信条は、生活習慣・日常の行動にも変化を及ぼし、以前のizagon(izagon1.0)とはまったく別の社会的存在になりました。

たとえば、年末から正月にかけて、izagon2.0は、実家にお歳暮を贈り、また妻子を連れて帰省します。以前のizagon(1.0)では、歳暮を贈ったことなど無く、帰省も2年に一度程度でした。親が電話をかけてきたとき、旧バージョンのizagonはなるべく話を早く済ませようとしましたが、新バージョンのizagonは家族や親戚、飼い犬の様子を尋ねるなど、話を多くするように心がけます。

izagon2.0は、より社会性を増し、安定性を増したバージョンです。友人付き合い・先輩後輩の付き合いをするにも、以前のバージョンとは比べ物にならないくらい扱いやすくなっています。



と、まあ、こんな感じです。

自身が得た優れた知見を、広く周知することができるという、すばらしい機会に恵まれたのであれば、「文章を書く」「分かりやすく書く」「多くの人に、短時間で、たくさん伝える」ために、わずかな努力を惜しむのは、もったいないのじゃないかと、わが友人のために残念に思うものであります。