ちょっと前の話題作『司法のしゃべりすぎ』

司法のしゃべりすぎ
を先日読みました。

法律家らしいといえばらしいのですが、くだくだしい文章で、無闇に長いというのが全般の印象です。...こんな紹介では著者に申し訳ないですね。もう少しきちんと紹介しましょう。

著者の主張を簡単に言えば、「判決と関係の無いことを書くなバカ」「原告、マスコミは余計なものに期待すんな」。


続いて、もう少し長めの要約を。

裁判とは、事実を明らかにし、法律と照らし合わせて判断を行う、という過程なのだから、その論理的な過程の外にあることを書いたらそれは蛇足である。蛇足が当事者や社会に影響を与えてはいけない。
蛇足の悪いところは、(主文によって)勝訴した側は、蛇足の内容がどれほど不当だと感じても、これについて法的に是正する手段が無いという点である。また、憲法判断を伴う裁判の場合、憲法上最終的な判断は最高裁にしかできないことになっているのだから、蛇足によって判断が確定してしまうのは憲法違反ではないか。

こんな感じでしょうか。書籍には具体的な事例ともっと詳しい説明があるので、ぜひ読んでいただきたい。


続いて私のウラ読みですが、著者は裁判が政治活動に利用されている現状を苦々しく思っているのではないかと思います。戦後補償問題や、靖国問題、米軍基地問題など、左翼が裁判を利用している例が多いです。この間の「靖国神社の参拝は違憲」という判断が出た裁判なんかその最たるものですよね。


最後に、この本の主張に関する反論について。
amazonのレビューや、Web上で私が見つけた反論は、大別して次のようなものでした。

  • 実際の裁判で使われる各種の概念が厳密に使われていない
  • 憲法を扱う裁判の特殊性を勘案していない
  • 明らかな誤読(著者が「下級審は憲法判断できない」と書いているかのように理解している!)

私のみるところですが、どれも決定的な批判足り得ていないと思います。「蛇足」が影響力を持ち、是正する手段が無い、という著者の指摘を覆すような法理論なり実務論があればともかく、私は今のところそうした主張(=決定的な反論)を見いだせていません。

この本はもっと多くの人に読まれるべきだと思います。また、議論の的になる価値がある話題だと思います。