たった2作で底が見えた・・・のか?

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

NHKにようこそ!』の著者のデビュー作だそうです。
角川文庫らしい、ぺなぺなでスカスカな装丁で、さっくり2時間くらいで読めました。

うーん。この2作、そっくりですね。
著者の描いた主人公は、二人とも「他人のために死ぬ」ことでしか、自分の人生に意義を見出すことはできない、という価値観に行き着くのだけれども、偶然とヒロインによって一応の救済を得るのです。
「他人のために死ぬ」という行為は、一見すると立派なことのように見えます。しかし、主人公たちにとっては、「他人のためにことを行う」ことさえも、やがて価値が薄まっていってしまうつまらないことなのです。彼らが出す答えは、結局、「死」という絶対的な終末によって、他人のための行為を絶対的なものにしようというものに過ぎません。
言い換えると、主人公は、「あいつはだれそれのために死んだ」という伝説を作って死にたい、と望む、英雄願望の入り混じった自殺志願者なんです。
つまり、彼らの「誰かのために死ぬ」という行為は、複雑でややこしく、意味を見出しにくい世間から、逃げた結果なんですよね。
偶然とヒロインによる救済も、なんだか甘っちょろくて、ぬるいです。いいのかそれで!と問いたいですよ。

こきおろしてしまいましたが、それでも面白いです。倫理的な悩み、政治的な悩みとは無縁の、僕らの世代の青春文学、なのかも知れません。おっさんになった今の僕は、眺めおろして「ガキだな」と笑っていられますが、あんがい最近の若者は深い共感を抱いたりするんじゃないでしょうか。