学校の花壇に咲く

陰日向に咲く

やけに評判が良いので読んでみました。

うまい。かなりよく書けている短編集だと思います。
不遜な言い方になってしまいましたが、私には逆立ちしても書けないほど、
完成度の高い小説です。

難点を言えば、その完成度の高さでしょう。
我々読者からしたら、お笑い芸人の処女小説とくれば、完成度は低くとも、
何かふっ切れた、突き抜けたところがあるのを期待してしまいますが、
そんな期待には応えていません。

ホームレスに憧れるサラリーマン、ギャンブル狂の男など、偏執的な
性癖のある人物の内面を描写しているところは、かなりな力量を感じますが、
5分から10数分程度のお笑いのネタのような「パターン化」や「まとまり」も
見え隠れしています。
ちょっと頭の悪い若い女性をめぐるストーリーなどは、...かなりステレオタイプで
面白くないです。

なんというか、...『矢口ひとり』で矢口真里相手に演じているような「キャラ」
であり、語り口なんですよね。
小説なのに、テレビ向けの芸を見せられている、という感じ。

うーん、こう書いてしまうと点が辛いかも。「長編を書いた後の大御所が、
手遊びで書いた短編集」だったら、かなり納得して読んだ気がするんですが、
これが処女作だからねえ...

よくも悪くもよくまとまった小説だと思います。
さて、次はあるんでしょうか?